仏心のある生活(7) 

ほとけとの出会い(2)

 ふとしたことから日頃尊敬していた人の心の貧しさを垣間見たばっかりに
ひどく興ざめしたり、その逆に普段意に介していなかった人の言葉や行いに
生涯忘れられないような感銘を受けたりすることがあるものです。

 私が子供の頃のことです。家へ雑仕事に来てくれるお爺さんが居りました。
大のお酒好きで、いつも二日酔いのような感じの人でしたが
年の瀬もおしつまったある夜のことです。

近所で大火があり、私の生家(慶珊寺)の藁葺の屋根には大粒の火の粉が
すさまじい勢いで降りかかってきました。
「もう駄目かもしれない」恐怖におののいていたその時です。
印半てん姿でかけつけたのがそのお爺さんでした。

 驚いたことに彼は、火の粉の雨をついて高い本堂の屋根を登り始めたのです。
そして屋根の中腹に至ると立ち止まって腕を組み、
「さあ来い!」とばかりに天を睨みました。
下から見上げるその姿は小さいものでしたが、
私の目に映ったものはすごく大きい不動明王の姿でした。
その化身となったお爺さんは命がけで本堂を守ろうとしたのです。

その勇姿に勇気づけられた私からスウーッと恐怖心が抜けて行った替りに
熱いものがこみ上げて来ました。
その時私は不動明王という名のほとけに出会ったのです。



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